企業は消費者の関心を引こうと激しい競争を繰り広げている。インターネットが普及し、販路や媒体が大幅に増え、さらにはグローバリゼーションに伴い国際ブランドが多数登場したおかげで、消費者は情報の洪水の中から選別しなければならない。また企業の側も、的確にメッセージを伝え自社製品やサービスを知ってもらうのに四苦八苦している。こうした厳しい競争環境では創造的なマーケティングがきわめて重要であり、製品やサービスに何か新しい体験的要素すなわちエクスペリエンスを組み込むことがますます重要になってきた。
今日の消費者は製品の特徴を確かめるだけでなく、豊かな体験を求めるからである。こうした欲求に対応して企業はさまざまな手法を試みており、自社製品を中心に据えたライフスタイルの提案を広告を介して行う、製品にふさわしい環境で心ゆくまでブランドを堪能する場やツアーを用意するといったアプローチが見受けられる。
製品
主導型経済に取って代わったのはサービス経済だが、次はエクスペリエンス経済だというアナリストもいるほどだ。目新しい体験を製品に盛り込むマーケティング手法は以前からあるが、エクスペリエンス経済の概念はまったく新しい可能性を秘めており、従来の手法を圧倒して急速に拡がって洗練された新しい形態をとりつつある。説得力のあるエクスペリエンス要素が製品に取り込まれていない場合、消費者は心に残る体験が期待できる製品・サービスになびいてしまい、需要が落ち込む恐れがある。逆にエクスペリエンスをうまく製品に付加できれば新規顧客の獲得や既存客の定着度改善に効果があり、ブランドに新たな息吹を吹き込むことができるだろう。 (17ページ)(著者:Martin
Schwirn)
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