ナノテクノロジーは、ナノスケール(1ナノメートル(nm)=10億分の1メートル)の材料を操作・制御する技術・プロセスをすべて含む幅広い言葉である。ナノテクノロジーの起源は、先見的なノーベル賞物理学者リチャード・ファインマンが1959年に行った講演まで遡るという。講演の中でファインマンは、未来の科学者は原子・分子レベルの物質を操作して機械・電気・生物システムを作れるようになるだろうと述べた。
以後40年にわたってエレクトロニクス、コンピュータ、通信、ジェノミクス、バイオ分野に劇的な変化をもたらすことになる極めて重要な科学的進歩の芽を、彼ははやくも見抜いていたのだ。
ナノテクノロジーは突如出現したわけではない。20年以上も前から通信ネットワークや光記憶装置の一部に使われてきた量子井戸レーザーは、ナノテクノロジーの最初の実用例と言える。
だが次のような理由から、最近になってナノテクノロジーは大いに注目を集めるようになった。例えばごく当たり前のように使っている製品−特にコンピュータや家電−も、マイクロスケール(1マイクロメートル(μm)=100万分の1メートル)での制御が可能になったからこそ実現したものである。このレポートはナノテクノロジーの背景に注目し、主な問題点、波及効果、今後の動向について検討する。
(11ページ) (著者:David J. Roughley, Robert Thomas)
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