エマージェンス(創発)とは、たくさんの独立した動作主体すなわちエージェントのランダムな動きから、高度で複雑な行動パターンが得られることを意味する。
エマージェンスはいろいろな切り口から産業界の関心を集めている。第一に、エマージェンスについてわかってきたことを適用すると、企業が直面する複雑な経済環境・事業環境をよりよく理解できる。例えばグローバル経済の動向、消費者が購買決定に至る過程、口コミの拡散、企業組織のダイナミクスなどを新しい視点からみることが可能だ。第二に、エマージェンスのコンセプトをエンターテイメントやビジネスに応用する実験が進んでいる。エンターテイメント分野ではウィル・ライトのゲームSim
City 、ビジネス分野ではサウスウェスト航空の貨物オペレーション・システムなどの例がある。第三に、エマージェンスは自然界の複雑適応系が示す顕著な特徴である。
このことから、変化の激しい事業環境に適応するためにはエマージェンスのどんな特徴が活用できるか、企業の関心は高い。従来の命令指揮型組織やプランニング・プロセスには限界があるが、自然界の複雑適応系から別の選択肢がみつかるかも知れないとの期待がある。
(著者:Kermit M. Patton )
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