この研究は、脳画像技術の最近の動向と同技術の企業や消費者に与える影響について考察する。
ニューロイメージング技術は心理学や行動科学の分野に革命的な変化をもたらし、人間の思考過程や行動の謎が遂に解けるとの期待が出てきた。機能的磁気共鳴画像(fMRI)を始めとする新しいニューロイメージング装置が登場したおかげで、停滞気味だったバイオフィードバック(現在ではニューロフィードバックと呼ばれる)分野が再び活気づき、ニューロエコノミックスやニューロマーケティングなど新たな応用への道も拓かれている。
例えばニューロフィードバック療法を活用したテレビゲームは注意欠陥障害(ADD)の子どもの治療に役立つだけでなく、スポーツ選手や俳優などの集中力を高めるなどの効果もある。またニューロエコノミックスの分野では、製品の好き嫌いなど消費者の購買決定の理解に、fMRIによる脳画像の分析が役立っている。
このようにさまざまな方面で進歩がみられるものの、研究者が認識している通り脳は途方もなく複雑な器官であり、その実態はほとんど解明されていない。現在のニューロイメージング技術をもってしても脳の働きのごく一部しか捉えられておらず、脳のスキャン結果を正確に読みとるにはまだまだ時間がかかると専門家はみている。また脳の解明には倫理問題が絡んでくるのは必至であるから、ニューロイメージング技術の開発に携わる研究者は勿論それを利用する側も先を見越した対応が必要であろう。
(9ページ)(著者:Thomas M. McKenna)
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