従来の薬物投与法に代わる新たな手法の開発は技術革新の主目標であり、企業戦略や事業機会にも深く関わっている。
ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)の開発に携わる企業は、既存薬の処方・製剤方法を変える、効率よく集中的に患部に薬剤を送り込むメカニズムを開発する、薬効や安全性を高められるような特性を付加する、といった方法で活路を拓こうとしている。
例えば超音波を利用した経皮吸収、加熱活性化による高分子ヒドロゲルからの薬剤放出、光に反応するナノスケールの多孔性物質の活用、デリバリー・システムの微小化、噴霧吸入などのデリバリー・システムが開発中だ。これらの技術は、新しい治療法をバイオ研究の段階から実用化へと導くうえで重要な役割を果たすだろう。
薬剤を患部に集中的に送り込むシステムに溶解性の向上や毒性の抑制といったメリットが付加されるなら、まさに待望の手段として市場の期待に適う。新しい治療法では患部を集中攻撃するデリバリー・メカニズムが求められる一方、慢性疾患の管理では、体内に埋め込んで統合的に機能するスマートなシステムが望ましい。
ゲノム研究を生かして生体分子を使う治療法などが開発されれば、ますますDDSの高度化が望まれることになろう。
(11ページ)(著者:Andrew Broderick)
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